ガラパゴス化という言葉があるよ…
AI画像生成を活用した絵画が海外で賞を取った!騒がれた原因と与えた影響とは?

現在、「Midjourney」をはじめとするAI画像生成で作成された絵は、さまざまなジャンルで活用されています。「Midjourney」が生み出す絵は一種の絵画のような濃厚で美しさがあり、高精度なものを印刷して額縁に入れて飾っておいてもパッと見ただけではそれがAIが描いたと気づく人は少ないのではないでしょうか。実際、AIが描いたイラストが海外で賞を受賞しています。これに対して賛否両論な意見が集まっています。こういった事例が与える影響力はどれほどのものなのでしょうか。今回は、AIで描かれたイラストが海外の賞を受賞した事例とその影響などを紹介します。
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AIが描いたイラストが海外の賞を受賞した事例
2022年8月31日に、米コロラド州で開催された展覧会「Colorado State Fair」(CSF)アートコンテストの新進デジタルアーティスト部門で画像生成AI「Midjourney」を駆使して作成された絵がブルー・リボン賞(1位)を獲得したと米ニュースサイトのMotherboardで報道されました。
引用元:(https://twitter.com/drewharwell/status/1565719966317481984)
コンテストに提出した絵のタイトルは「Theatre D’opera Spatial(仏語で『宇宙のオペラ劇場』)」であり、提出した人間はアメリカのボードゲームメーカー「Incarnate Games」のCEOを務めるジェイソン・M・アレン氏です。アレン氏はアーティストではなく、芸術コンペに応募するのも初めてだったそうです。
賞を受賞したAI作品の作者と主催者側のコメント
アレン氏はディスコード上のサーバー上で次のようなコメントをしています。
「これが物議を醸すことは分かっていた。極端な例えだが、あるアーティストが逆さ吊りやむち打ちされながら絵を描いたとする。彼の作品は、同じ作品を“普通に”作った他のアーティストとは違う評価を受けるべきか?」
「結局どうなるかは分かっている。いずれ芸術界はAIが制作した芸術を“人工知能アート”として独自のカテゴリーを作るだろう。私は今、立ち止まることはない。この勝利は、私自身をさらに鼓舞させた結果なだけだ」
受賞後、2022年8月末の電話取材に対してアレン氏は「この作品がAIを使ってできたことは明示しており、制作方法について欺くようなことは一切していない」と、作品提出時にコンピューターとMidJourneyを使用した事は審査員に話し、応募名も「ミッドジャーニーを用いたジェイソン・M・アレンの作品」となっていました。その後審査員からデジタルアート部門へ提出になりますと言われたそうです。「謝るつもりは毛頭ない。規則はどれ一つ破らずに勝ったのだから」
引用元:(https://twitter.com/drewharwell/status/1565719966317481984)
今回AI画像生成を使用した絵はルール違反ではないことをCSFを所管するコロラド州農務省の広報担当オルガ・ロバックが以下のように話しています。
「応募にあたってアレンは適切にミッドジャーニーの使用を開示していた。応募部門の規則では、創造的な作業や作品説明の過程の一環として、デジタル技術を用いたいかなる芸術的な行為を実践してもよいことになっている」
「この部門の選考委員2人は、ミッドジャーニーがAIプログラムであることを知らなかったが、仮に知っていたとしても、アレンの作品を1位に選んでいたと2人は後で自分に語ってくれた」
賞を受賞したAI作品に対する反応
AIを駆使した作品が1位を取るのは初めてであり、様々な非難の声が巻き起こりました。
・「良い道具を使っただけでその絵を人間が評価して良いとしたならそれでいいのでは?」
・「アレン氏が行ったことは「だけ」と評価されるものではないと思います。何百の画像から選び出しては微調整、その繰り返し、やっている過程を考えたら絵画製作と変わらない気がします。」
・「何百枚の中から厳選するのかは出品者の”感性”によるもの。作品を芸術と捉えることは出来ると思う。」
・「下絵をAIに描かせてあとは人がレタッチを行って完成させるとかなら、昔の工房と同じスタイルとも言えますしね。」 など
しかし、中には批判というより畑違いだったのでは?といった意見も多くあったようです。
・芸術を『制作方法』で評価するのは当然のことだと思う。スーパーリアリズムは絵画だから価値があるのであって、全く同じ精度の写真があっても何の価値もない。
・ ”実用”ならAIでも機械でも勝手に使えばいい。”競う”のであれば、同じレギュレーションに立たないと意味ないでしょ。AI絵画コンテストでもやればいいんですよ
・「芸術性そのものを競う」のか「いかに人間が上手く芸術的な表現を行えるかを競う」のか。の認識の差じゃないですか?前者であれば作り手や制作方法を問うのは野暮です。
AIが無ければどちらも大差ないものだったので、現状各々で認識が違うんじゃないかと」
・「でもやっぱり、人間が描いたと思って品評してる人に黙ってAIが描いた絵を見せることが良いこととは思えない。今回は過渡期ゆえの試みと認識すべき。」
引用元:Togetter「AIが描いた絵が美術コンテストで1位をとってしまい人間のアーティストが激怒→様々な議論が沸き起こる」(https://togetter.com/li/1939056)
ちなみに、提出作品への苦情は誰でも申し立てることができます。ただし、300ドルの保証金を支払い、違反した特定の規則がどこかを引用し、直接苦情の手紙を提示しなければいけません。
賞を受賞したAIが描いたイラストの技術
アレン氏がを作り上げた過程は次のとおりです。
①Midjourneyを使って80時間以上をかけて100枚以上のイラストでプロンプトを微調整し絵画画像を生成
②その中から3枚を選んでフォトショップで調整
③GigaPixel.AIを使って画像解像度を上げたものをキャンパスにプリントアウトし、3品を提出
80時間以上をかけて100枚以上のイラストでプロンプトを微調整し、その内の一枚が受賞しました。
AIが描いたイラストが海外の賞を受賞したことによる影響
カメラやコンピューター登場によるデジタル編集技術など、過去にも芸術制作における技術論争はされてきました。しかし、今回の問題になっているのは、単純に美しい作品を新技術によって人間が一から制作するよりも簡単に仕上げられたことだけではないように思えます。
一般的に、AI画像生成は膨大な数の作品画像をネットから収集し、それを分析、パターン化したものを学習データとして蓄積し、人間に書き込まれた英文の指示を受けて作品を生成します。AIは学習データの中にあるものから作品を出すため、同じ英文を入力しても「Midjourney」と「Stable Diffusion」では異なる絵が生み出されます。
また、作品の質を上げるためには入力する文字数を増やし、具体的でAIの学習データにヒットするものを考えなければいけません。そのため、プロンプトに入力する文章は呪文と呼ばれ、日々様々な人々が呪文錬成を行い、素晴らしい絵を生み出しています。
どうしても呪文を書くのが難しい場合は、AIによる様々なシーンで使える文章作成サービスが100以上揃っているAIコピーライティングツール「Catchy」の「AI で画像生成するテキストを作成」を使用して、呪文を作ってみることをオススメします。
呪文の錬成度合いによって生成される絵がどう異なるのか「Stable Diffusion」と「Catchy」を使って紹介します。
A black dragon roaring at a volcano(火山で咆哮をあげるブラックドラゴン)
「Catchy」に火山で咆哮をあげるブラックドラゴンと入力します。
これにさらに文章を錬成します。
An oil painting of a golden-eyed black dragon roaring over an erupting volcano by Leonardo da Vinci style. The sky is dark, dark clouds are looming, and there is an unsettling apocalyptic air in the air.unreal engine,perfect lighting,8k,by Canon EOS 5D Mark4 and SIGMA Art Lens 35mm F1.4 DG HSM, F1.4, ISO 200 Shutter Speed 2000
「 by Leonardo da Vinci style」を入れたことで、どこか神々しい雰囲気になりました。おそらく「Stable Diffusion」の学習データの中には「Leonardo da Vinci」の作品などのデータが入っているのでしょう。
ちなみに「Midjourney」に同じプロンプトを入力するとこうなります。
AIは学習データの中にないものは作り出せません。学習データにネットに公開されているからといって本人の許諾を得ずに著作権のある絵描きのデータを取り入れるなどのような行為をする人間がいるとなると、作品をネット上に公開している創作者は気づかない内にAI使い手創作者のアルゴリズムを育てていることになります。自分たちが腕を磨けば磨くほどAIはどんどんレベルアップしていくため、今後自分たちの仕事がなくなるのではないかと不安になり、AIアートが賞を受賞したことに怒りの声があがったのではないかと考えられます。
まとめ
先駆者の技術を盗み取り入れ、自分の絵に活かすことは人間もしてきたことであり、AIはそれを効率よく素早くできる技術を持ったツールなだけです。問題なのは学習データの中へ、ネットに公開されているからといって本人の許諾を得ずに著作権のある絵描きのデータを取り入れるなど、AIを使う側の人間の倫理観ではないでしょうか。今後もAIをツールとして使用した絵画はどんどん出てくるでしょう。AI画像生成が気になった方はぜひキャッチコピーサービスなどを活用して英文を作り、無料のAI画像生成サービスを利用してみてはいかがでしょうか。