ガラパゴス化という言葉があるよ…
2022年12月のAI画像生成は変わり種が多い?赤堀堂馬が選んだトピックレポート!

22年8月に英国のAI開発企業Stability AIが一般向けに公開した「Stable Diffusion」がオープンソースで提供されたことで一部の研究・開発者だけでなく一般ユーザーも使えるようになりました。AI画像生成が広がることで日本の「SNS流行語大賞2022」に「AI絵師」という造語がノミネート、AI画像生成に特化したイラスト投稿サービスが登場するなど、2022年は「画像生成AI元年」といわれており、その技術とサービスに関心が集まりました。
2022年12月はAI画像生成をただ利用するのではなく、さらに進化させるよう提携する変わり種なニュースが多いように感じました。今回は2022年12月のAI画像生成に関するトピックを赤堀堂馬がレポートします。
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AIが作った画像が喋る動画生成サービス「Creative Reality Studio」登場
イスラエルの企業「D-ID」はジェネレーティブAIのビデオプラットフォームビデオプラットフォーム「Creative Reality Studio」を2022年12月13日に発表しました。
D-IDは2022年7月にも亡くなった人や歴史上の人物の写真を動かす動画を作れる動画コンテンツ制作のソリューション「Deep Nostalgia 」を発表し、話題になりました。
「Creative Reality Studio」では、D-ID独自のディープラーニング技術の他、文章の生成には米Open AIの「GPT-3」、画像の生成には英Stability AIの「Stable Diffusion」を使用しています。プロンプトを基に顔や文章を自動合成し、その顔をアニメーションとして動かしながら、119の言語でテキストを読み上げ、動画コンテンツを作成します。
この技術を利用することで、アバター自体の用意や音声収録などの準備のハードルが下がり、誰でもすぐに音声動画を作成することが可能です。
たとえば、研修内容を説明する動画や自己紹介動画などを手軽に作成できるため、企業だけでなく個人も自撮りを元にしたアバターで音声付き動画を作成し、SNSに投稿することもできます。
無料プランでは20クレジット分までであり、動画化には2クレジットを消費します。有料プランは月額5.99ドルからで企業向けプランも用意されています。
さっそくグーグルアカウントでログインし、試してみました。
アバター画像は複数枚用意されており、写真をアップロードすることもできますが、今回はプロンプトを入力してアバターを作ることにしました。
アバターを作成します。これはクレジットが消費されないようです。
Short reddish brown female model, wearing glasses, boyish, black jacket suit, late 20s, cute, smiling, perfect center portrait, highly detailed, diffused natural light, front view, 8k, hyper-realistic
(短い赤褐色の女性モデル、眼鏡をかけている、ボーイッシュ、黒のジャケット スーツ、20 代後半、かわいい、笑顔、完璧な中央のポートレート、非常に詳細な、拡散した自然光、正面図、8 k、ハイパーリアリスティック)
音声は、ユーザーが入力した文章をそのまま読ませることができ、事前に収録した音声データをアップロードして利用することもできるようです。まずは下記のように私の自己紹介を英文で入力し、言語や声を設定してみました。
「Nice to meet you, Akahori Douma.2022 was a turbulent year with many recessions, such as being forced to take an indefinite leave of absence due to multiple chronic diseases.
However, it was also a year in which I met many people and reconsidered new ways of working.
In 2023, I would like to create a new brand for myself and continue my activities with excitement, so please support me! !」
(はじめまして、あかほりどうまです。2022年は、複数の持病により無期休業を余儀なくされるなど、不景気が続く激動の年でした。
しかし、多くの人と出会い、新しい働き方を考え直した年でもありました。
2023年は自分なりに新しいブランドを作って、ワクワクしながら活動を続けていきたいと思いますので応援よろしくお願いします! !)
・言語:English(英)
・声:Hollie
もう一つアバターを作ってみました。
Female model with pink hair, beautiful woman, wavy hair, blue lipstick, fancy makeup, perfect center portrait, highly detailed, diffused natural light, front view, 8k, hyper-realistic
(ピンクの髪の女性モデル、美しい女性、ウェーブのかかった髪、青い口紅、派手な化粧、完璧な中央のポートレート、非常に詳細な拡散自然光、正面図、8k、ハイパーリアリスティック)
プロンプトを基に顔がアニメーションで動く!?D-IDの「Creative Reality Studio」試してみた!#short #shorts… https://t.co/meEcGxcF7D @YouTubeより
— 赤堀堂馬@セルフバ美肉とか色々画策中 (@doumaakahori) January 4, 2023
簡単に魅力的なアバターの自己紹介動画ができてしまいました。これはすごいです、多少不自然さはありますがちゃんと口が動いて喋ってくれています。日本語にも対応してくれるのが嬉しいですね。動画生成に2クレジット必要ですが、お試しに20クレジットあるのでぜひ興味を持った方は試してみてください。
AIを駆使して絵本作成しアマゾンで販売
画像参照元:Amazon
アメリカのIT企業で働くデザインマネージャーのアマール・レシさんは、AIを駆使して「Alice and Sparkle」というタイトルがついた絵本(14ページ)を作成し、アマゾンで販売しました。
レシさんは対話AIである「ChatGPT」でストーリーやイラストのベースを考え、MidJourneyに「少女」「青い目」「好奇心が強い」などのキーワードを入力し、ヒロインとロボットのイラストを制作したことなどを、12月10日にTwitterのスレッドにて説明しています。最初に作り出された絵は奇妙なホラー作品のようで、望むようなテイストが生み出されるまで2時間ほど試行錯誤したそうです。
友達の子供のために絵本を作ろうとアマゾンの電子書籍と紙書籍を作れるサービスを利用することにしたところ、Instagramに製本されたものを投稿すると購入したいとリクエストがあったため購入できるようにし、ツイッターで拡散した結果、70冊以上(印税約200ドル)が販売されました。
私からすると、持てる技術を最大限駆使して、自分の夢(友人の子供のために絵本を作ること)を叶えたのだから、努力した結果利益が発生したと考えるのですが、イラストレーターやクリエイター業界から賛否両論の声が上がっています。中には殺人予告のような脅迫まで届いているそう。
中でも、AIが生成した絵の元データはアーティストが時間・情熱をかけて作ったものであり、それを使った本作品はアーティストを搾取した盗作だという主張が多いようです。
しかし、AIがこういう話や画風はどうかと様々なデータからレシさんに提案し、最終的に選び取ったのはレシさん自身であり、レシさん本人の感性です。それに、世の中にいるアーティスト全員がこの世に存在していない自分だけの作風を持っているとは思えません。AIはアーティストが積み上げてきた歴史と技術から、プロンプトに寄り添った最善の答えを導き出しているだけです。それは人間も同じではないでしょうか。AIが人間よりもはるかにそれが簡単にできるからこそ、盗作だ、搾取だと感じるのではないかと私は考えています。
現在はアマゾンのAudible版で販売されているようです。
モバイルアプリ「AI ピカソ」✕「いらすとや」
2022年12月20日、フリーイラストサイトとして有名な「いらすとや」と「AI ピカソ」を提供するAI Picasso(株)が提携を発表し、「AIピカソ」に「AIいらすとや」が追加されました。
AI ピカソとは、入力したテキストを基にAIが簡単に画像生成をしてくれるモバイルアプリです。画像の一部を塗りつぶしてその部分をAIに補完させるなど、簡単なラフ画を描いて続きをAIに任せることもできます。いらすとや風の画像生成をするには、テキストを入力してスタイルを「いらすとや風」に指定し、生成ボタンを押すだけです。
「街をなぎ倒す猫」と入力し、「いらすと屋風」を選択して生成します。
大怪獣猫ちゃんが現れて超大変だけどかわいい画像ができました。シールにしたいです。
現在ベータ版の扱いなので、フリー素材の利用は許可されていませんが、SNSにシェアするなどは可能のようです。一日に生成できる画像の数には制限があり、解除するには「Pro」プラン(年額4,444円など)に加入しなければいけません。3日間以内に解約すれば大丈夫なので、ぜひ試してみてください。
AI ピカソ的には、将来的にユーザーが生成した画像を閲覧・ダウンロード可能なサイトを開設し、フリー素材として利用できるようにしたいそうです。
とうとう大手AIによる万人が使いやすいフリー素材サイトがもうすぐできてしまうんですね。すごく楽しみです。いらすと屋さんのいらすとはいたるところで使用されているので、AIいらすと屋で作成された画像はかなり需要があると思われます。
米Adobeが「Adobe Stock」にAI画像生成コンテンツを認めるとを発表
2022年12月5日、米Adobeはストック画像サービスAdobe StockでAI画像生成を使って作成したイラスト投稿を受け入れるための新しいガイドラインを公開しました。
AI画像生成は学習データに何を取り込んでいるかによって、グレーであったりクリエイターの仕事を奪うなどの批判がありますが、Adobeはそれは初期のAI技術であり、現在の技術は人間の想像力に取って代わることを求めずアーティストに力を与える進化へと支援することに尽力しているとしています。
ただし、AIが生成した画像はAdobe Stockへ無条件に受け入れられるわけではなく、いくつかの基準に合格しなければいけません。
・Stable DiffusionやDALL-E2のような、利用可能と認められたツールで生成
・写真的に見えたとしてもすべてイラストとしてラベル付けを行い、AIが作成したことをタイトル、ラベル、タグにおいて明記すること
・人物、場所、財産、アーティストのスタイルに言及したものなどの第三者コンテンツに基づく画像を適切な許可のない提出を禁止など
他のストックサービスでは現在AIが生成した画像を禁止しているところが多いですが、Adobe Stockが受け入れたことで今後どのように変化していくのかが注目されるでしょう。
AI画像生成によって作成されるコンテンツは、無法地帯ではなく厳格なルールに基づくことで、提供者も消費者もどちらにも恩恵を得られるのではないかと私は考えています。
まとめ
AI画像生成の画像は学習データによって著作権の問題が生じないかなど、法律やコンプライアンス、社会的、文化的観点から議論する必要がある課題はまだまだ山積みです。AI画像生成はまだ発展途上ですが、その進化の手を止めることは時代の流れ上できないでしょう。これからのAI画像生成の発展に大注目です。
この記事を書いた人:赤堀堂馬(あかほり どうま)
大阪育ちのWEBライター。小説やイラスト、動画作成、ハンドメイドなど様々な創作活動を行っている。色んなところにアンテナを張ることで、様々な視点を持ち原稿を書いている。ポメラニアンが好き。